2026.10.06 議会質問報告

【令和8年第3回定例会】決算等審査特別委員会(全体会)(1)自走化に向けた最終ゴールも制度設計もないスタートアップ支援事業、(2)『最高の音響』を謳うにも関わらずISO指標にすら準拠しない音楽ホール

概要 Summary

 決算等審査特別委員会とは、前年度の会計決算などを専門的かつ詳しく審査するために設置される特別委員会です。大草よしえは、先の分科会で得た事実(第3分科会での質疑『数字で質すスタートアップ支援事業の実態。自走化に向けた最終ゴールも地元へのノウハウ蓄積もないまま予算9割が域外流出』のリンクはこちら)や、これまでの定例会等での議論(第2回定例会での一般質問『音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設の市民理解』のリンクはこちら)をもとに、市長に対し、市民理解を得られない本市事業推進のあり方を質しました。スタートアップ支援では「『自律的で持続可能なエコシステム形成』を掲げているにも関わらず、自走化に向けた最終ゴールも制度設計もない構造的欠陥」を、音楽ホールでは「『最高の音響』と謳っているにも関わらず、ISO指標にすら準拠しないまま数百億円もの公費を投じる基本設計の問題点」について質しました。当該事業については、事業設計の抜本的な見直しを求めて、「ならぬものはならぬ」の精神で、決算の認定に反対しましたので(反対討論へのリンクはこちら)、併せてご覧ください。

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令和8年第3回定例会 10月6日 決算等審査特別委員会(全体会) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑

(1)自走化に向けた最終ゴールも制度設計もないスタートアップ支援事業、(2)『最高の音響』を謳うにも関わらずISO指標にすら準拠しない音楽ホール

 私からは、「スタートアップ支援事業」、及び、「青葉山エリア複合施設整備事業」の2件に関して、お伺いいたします。

(1)スタートアップ支援事業「最終ゴール(KGI)なき制度設計」

 まずは、先の第3分科会に引き続き、第6款経済費のうち、「スタートアップ支援事業」について伺います。

 決算年度は、施政方針で郡市長が「グローバル・スタートアップ都市・仙台」を掲げ、関連予算も16.4億円へと大幅に増強し、本市を含む「仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」が内閣府の「グローバル拠点都市」に選定された年でした。一方で、本市の支援事業に対し、多くの懸念の声が寄せられるようになったため、私はヒアリングや調査研究を重ね、議会でも取り上げて参りました。

 これまで私が1年半にわたり域内外の関係者や有識者にヒアリングを重ねた結果、本市が旗振り役として機運醸成に大きく貢献していることについては、一定の評価が得られているものと認識しております。しかし一方で、本市は最終的には「自律的で持続可能なエコシステムの形成を目指す」とし、「エコシステムビルダー」を自認しているにも関わらず、民間主体での自走に向けた「最終ゴール(KGI)」も「出口戦略」も設定しておりません。この設計自体の根本的な欠陥により、行政が直接支援やイベントを実施すること自体が目的化しているのではないか。これが、地域から寄せられている強い懸念の根本原因であると、現状を認識しております。

 そこで先の分科会では、この「KGIなき手段の目的化」に対する疑念を前提に、客観的な数字と事実を突き合わせました。その結果、これまでのご当局のご答弁とは大きく乖離する実態が浮き彫りとなりましたので、この全体会では改めて市長のトップとしてのご認識を伺います。

 そもそもエコシステムビルダーの役割とは、産学官金が立場を超えて連携し、「ヒト・モノ・カネが"自律的に回る仕組み"を構築すること」であると、本市が認定された内閣府の「スタートアップ・エコシステム拠点都市戦略」にも明記されております。

 ただ、本市は「現時点では、地域の力だけですべての事業を実施するのは難しい」という現状認識のもと、行政がスタートアップの直接支援を、主に東京などの域外事業者に単年度で委託することで実施しています。

 現段階で地元に不足する要素を補うために、東京など外部の知見を取り入れること自体を否定するものではありません。しかし、外部から知を取り入れると同時に、この地域に支援ノウハウや社会関係資本がストックされるスキームが予め設計されていなければ、公金による事業終了とともに支援体制は途絶え、結局は、一過性のイベントに終始し、地元には何も残りません。

 そこで、昨年度の第3回定例会で、私が「地元に支援ノウハウや社会関係資本がストックされるよう、フロー型ではないストック型の制度設計」を求めた際、ご当局からは「域外の事業者が受託する場合でも、地元支援機関等とのネットワークを有していることを委託の要件としている。このことにより、域外受託者から地元事業者への再委託を行っている案件が複数ある」とのご答弁がありました。

 ところが、先日の分科会でその実態を客観的な数字で確認した結果、これまでのご当局のご答弁とは大きく乖離する実態が浮き彫りとなったのです。

 まず、決算年度において、予算の約9割にあたる約2.8億円が、東京など域外の事業者に委託されておりましたが、このうち地元事業者への再委託金額は6事業者合計で約1,200万円でした。約2.8億円のうちの約1,200万円ですから、地元への再委託は金額にしてわずか約4%、ということです。

 さらには、その再委託業務の内容を確認したところ、会場設営やウェブサイトの保守管理など、単なる「作業の切り出し」が大半を占めており、事業戦略の策定やプログラム設計、成果責任といった中核業務への関与を伴わない周辺業務にとどまっていました。ノウハウ蓄積に関わりそうな業務は、私の見る限り、「勉強会イベントの企画・実施」と「学生への相談対応」の2件しかなく、再委託金額は300万円と30万円。つまり、約2.8億円のうちの、なんと、「わずか1%」に過ぎません。

 これでは、スタートアップ支援の核心である「目利き」や「伴走支援」等の専門ノウハウが地元に蓄積されているとは到底言えないのが、この客観的な数字が示す、実態ではないでしょうか。

【Q1】そこで、市長にお伺いします。この数字と実態を見る限り、地元にスタートアップ支援の専門ノウハウが蓄積されるストック型の制度設計になっているようには、私には見えないのですが、これで本当に本市の事業はストック型の設計になっていると、お考えでしょうか。

 もし現行の制度設計で「ノウハウが蓄積されている・それに向かっている」と評価されるのであれば、いつ頃までに民間主導のエコシステムが完成し、行政の直接支援が不要になるのか、そのタイムラインをお示しください。

 逆に、現状の仕組みでは「ノウハウの蓄積が不十分である」と評価されるのであれば、今後、毎年数億円も本市の公金を域外に流出させているフロー型の事業から脱却するために、具体的にどのような制度の抜本的見直しを行うのか、トップとしてのご見解を伺います。

答弁 Answer

スタートアップ支援課長

【A1】スタートアップ施策の推進にあたり、地域への知見の蓄積も重要と認識しており、地域経済団体や市内金融機関と連携して支援するなどの仕組みを構築してまいりました。地域への知見の蓄積は途上ではございますが、本市におけるこれまでの取組みを通じて、スタートアップイベントへの地元企業の協賛や関連イベント主催の動きなど、地域内での自発的な活動が着実に生まれております。このような動きを更に加速させるべく、昨年度選定された「第二期スタートアップ・エコシステム拠点都市」の計画に基づき、令和11年度までの計画期間における様々な取組みを、鋭意進めてまいります。

 要するに、本市としては「現行の制度設計でノウハウ蓄積に向かっていると自己評価している。ただ、そのゴールまでのタイムラインまでは示せない」というご答弁とのことですね。

【Q2】それでは、お伺いいたしますが、ご当局に確認したところ、本市はスタートアップ支援に2017年度から9ヵ年以上にわたって、これまで6億3千万円以上もの予算を投じてきたとのことですが、9ヵ年以上も取り組んできてゴールが見えないというのは、そもそも元の制度設計に重大な問題がある証左ではないか、と考えられますが、いかがでしょうか。市長にご認識を伺います。 

答弁 Answer

市長

【A2】本市では平成29年度からスタートアップに向けた集中支援プログラムを開始して以来、地元の産学官金と連携しながら、支援を行ってまいりました。その中には株式の上場ですとか、それから大型の融資の獲得を達成した企業、そしてまた海外の企業との関係構築に至るという事例も出てございます。また、成長した企業が次世代の育成に関わるなど、循環的な動きも生まれておりまして、経済成長のエンジンとして機能し始めていると認識をしております。こうした実績やエコシステムの更なる発展に向けて、計画が総合的に評価されて、国による第二期の拠点都市の選定につながったものと考えております。今後とも、仙台東北の持続的な成長に繋がるスタートアップの創出に向けて取り組んでまいります。

 (問うた行政の制度設計の話ではなく、個別のスタートアップが努力した)実績を色々とご答弁いただきましたが、そもそもゴールなき事業は必ず手段が目的化します。本市の公金を毎年数億円も域外に流出させているフロー型事業から脱却すべく、改めて、実効性のあるKGIの早急な策定と、制度設計の抜本的な見直しを強く求めて、次の質問に移ります。  

(2)青葉山エリア複合施設整備事業「ISO指標にすら準拠しない公共施設」

 次に、第3款市民費のうち、青葉山エリア複合施設整備事業の音楽ホールに関して伺います。

【Q3】まず、決算年度における主な事業内容とその決算額をお示しください。

答弁 Answer

青葉山エリア複合整備室調整担当課長

【A3】決算年度には、基本設計業務に3億5,300万円余、音響コンサルタント業務に900万円余など市民費全体で4億7,100万円余の決算額となっております。

 ご答弁いただきました通り、決算年度は本施設の基本設計が完了した年でしたが、その必要性や妥当性について、市民や専門家からは、強い疑問と疑念の声が、相次いで寄せられております。

 本市は市民理解を得ようと説明の場を設け、そのすべての場に私も参加いたしましたが、ここまでのやり取りを見る限り、「市民からの理解を得られた」とは到底言えないのが現状であると認識しております。

 市民からの疑念は多岐に渡りますが、その中でも、音響工学の専門家から、音響に関する強い懸念の声があがりました。そこで私は、日本の建築音響工学・ホール音響設計の第一人者にもヒアリングを重ねながら、これまで調査研究と質疑を行って参りました。その結果、問題は一点に集約されると考えます。

 最大の問題点は、市長が本施設を『最高の音響』と謳っているにも関わらず、音楽ホールの音響品質を客観的にチェックするための評価指標を、本市が設定していない、ということです。

 さらに質疑を重ねた結果、あろうことか、世界中の音響設計者が音楽ホールを設計・評価する際に大前提として使用する、音響品質のISO指標すら、本市は採用していないという事実が明らかになりました。

 そもそも音響のISO指標は、国際的な専門家会議での科学的な合意を経て確立された、世界共通の基準です。これは、建物の音響品質を客観的に測る基礎的な指標であり、言わば、「健康診断における血液検査」に相当する、必要不可欠な、初期評価基準群です。

 ISO指標のうち、本市は「残響時間」以外を使用しないとのことですが、それ以外にも、例えば「空間性」「透明感」「親密感」「音量感」「演奏のしやすさ」といった、人間の主観的な聞こえ方を客観的な数値として評価するための物理量がISO指標に用意されています。これらISO規格という世界共通の測定ルールに則りながら、シミュレーションや模型実験等を用いて設計・検証を行っていくのが、現代の音楽ホール設計における世界標準です。

 ISO指標という世界共通の物差しすら使用せず、客観的な評価指標も設定しないまま、本市は、一体どうやってこのホールが『最高の音響になった』と客観的に証明し、発注者として、責任を持って検収するおつもりなのでしょうか。

 さらに立ち戻って、そもそもISO指標にすら準拠しない施設に、公金を投じること自体、あり得ないのではないでしょうか。

【Q4】基本設計の妥当性を問う、この決算審査の場において、市長にお伺いいたします。郡市長ご自身が『最高の音響』と謳うのであれば、最低でもISO指標に準拠することは必須と考えますが、市長のご認識を伺います。

答弁 Answer

青葉山エリア複合施設整備室室長

【A4】建築音響等に関するISO規格としてISO 3382がございますが、これは音響性能の測定方法、いわゆる測る手法を定めたものであります。音響の良し悪しを判定する数値基準は、学者により異なっており、日本音響学会でも定めていないところです。また、物理指標を設定しても、実際の音の響き方はホールごとに異なるものと音響コンサルタントより聞いております。基本設計では、コンピューターシミュレーションによる検証を行い、初期反射音の分布状況など、音響コンサルタントがこれまで手掛けた音響が良いホールの様々な指標と同等となるように監修いただいているところでございます。実施設計段階においても、音響模型実験を行うなど、優れた音響性能となるように取り組んでまいります。

 本市が、音響設計者のこれまでの実績や、同社独自のシミュレーション技術を信頼していることは、よくわかりました。しかし、それはあくまで、「受注者側の技術論」に過ぎません。私が問うているのは、数百億円もの公費を投じる本市の「発注者としてのガバナンスと責任」の話です。

【Q5】改めて、市長に問いますが、ISOという世界共通の測定ルールに則った数値すら公表できない音楽ホールに対して、本市は一体、何を客観的な指標として、世界中の演奏家や音楽愛好家の人々に『最高の音響だ』と認めさせていくのでしょうか。

答弁 Answer

青葉山エリア複合施設整備室室長

【A5】ISO規格は音響性能の測定方法を定めた規格であり、音響の良し悪しを測定する数値基準ではありません。工事発注時には、残響時間等の指標を記載する予定であり、音響コンサルタントからの助言をいただきながらシミュレーションによる検証のほか、音響模型実験を行うなど優れた音響性能となるよう取り組み、工事完了前には音響性能の検査測定も行ってまいります。

 同じご答弁をいただきましたが、ご答弁は要するに、本市はISOという世界共通の客観的な評価指標(物差し)すら使わず、受注者独自の非公開の技術と自己評価に依存して、世界に対して『最高の音響だ』と宣言するということと理解いたしました。本市の姿勢として、本当にそれでよいのでしょうか。

 以上で、私からの質問を終わります。