2026.06.19 議会質問報告

【令和8年第2回定例会】本会議(一般質問)「音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設の市民理解」

概要 Summary

心豊かな社会をつくる会の大草よしえは、前回に引き続き今回も、音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設の市民理解について質疑を行いました。本市が当該施設を「仙台ならではの新たな文化創造拠点」と謳う以上、文化の担い手である市民の理解なき事業推進は到底容認することができません。これまでの市民説明会やシンポジウムでのやり取りを見る限り、市民から疑問や疑念の声が相次ぎ、対話も不十分な中、市民理解は得られていないのが実態ではないかと質しました。 以下に、大草よしえの一般質問の録画中継(仙台市議会HPリンク)、質問内容及び市長等の答弁(全文)を掲載いたします。

録画中継はこちら

令和8年第2回定例会 6月19日 本会議(一般質問) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑

音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設の市民理解

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。私からは、音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設についてお伺いいたします。本事業につきましては、その必要性や妥当性に関し、多くの市民から疑問や懸念の声が相次いでおります。

 そもそも「文化」とは本来、行政から一方的に与えられるものではなく、市民が主体となって育んでいくものです。本市が当該施設を「市民が主役の、仙台ならではの新たな文化創造の拠点」と謳う以上、文化の担い手である市民の理解と納得なしに事業を進めることは、到底認められません。

 市民の理解が得られないまま事業を進めることは、結果として、「市民から望まれない、使われない施設」をつくることにつながります。新たな文化の創造どころか、将来の仙台に重大な禍根、すなわち、「負の遺産」を残すおそれがあります。まずは十分な説明と対話を尽くし、市民の理解を得ることが、何よりも先決であると考えます。

 そこで、市民理解の観点から、直近で開催された市民説明会とシンポジウムについて、お伺いいたします。

市民説明会とシンポジウム

【写真1】音楽ホール・中心部震災メモリアル拠点複合施設に関するシンポジウム(6月6日)

 本市は「市民の理解を得るために十分な説明を尽くす」として、5月13日と23日に市民説明会を、続いて6月6日に、郡市長や、基本設計を担当された藤本壮介氏らも登壇するシンポジウムを開催しました。

 私もそのすべてに、最後まで参加いたしました。いずれの会でも、市民からは極めて具体的かつ切実な疑問や懸念が相次ぎ、予定時刻を大幅に超過し、途中で質問を打ち切る結果となりました。中でも5月23日の市民説明会は、なんと5時間以上にもわたって、市民からの質問がノンストップで続くという、異例の事態となりました。

【写真2】5時間以上にもわたり市民から質問がノンストップで続いた市民説明会(5月23日)

 市民説明会の参加者数自体は定員を下回り、本事業の市民への周知不足を痛感させられた一方で、参加された方々からは、強い関心と同時に「このまま進めて本当に良いのか」という非常に強い危機感が伺えました。

 ここで出された市民の声を、大きく3つの論点に整理して取り上げます。

① 建設費の大幅な高騰と将来の維持費への懸念

 第一の論点は、建設費の高騰と将来の維持費への懸念です。

 市民からの最も強い反発を招いているのが、このコスト問題です。現時点で646億円に及ぶ総事業費、そして年間18億円もの管理運営費の大きさに、懸念の声が集中しました。

 これから人口減少が進み、今後10年で約3900億円の財政不足が見込まれる中、本施設の建設費や管理運営費、さらに未知の大規模修繕費が市の財政を圧迫し、将来の市民サービス削減や増税を招くのではないかという切実な声です。

 また、国内に前例のない大規模な可動機構や、複雑な屋根形状という「一品モノ」の特殊なデザインが、初期費用のみならず、将来の維持修繕費を膨張させるリスクも指摘されました。

 これに対し市側は、実施設計段階から施工者が参画する「ECI方式」の導入によるコスト抑制や、国からの補助獲得に努めるとの説明に終始しました。しかし、ECI方式はコストを劇的に引き下げる万能の『魔法の杖』ではなく、あくまで着工後の予算超過リスクを管理する手法の一つに過ぎません。市民が求めている本市財政への具体的な影響や、事業費の上限額が示されることもありませんでした。

 さらに、市民が求めた「仙台市の身の丈に合った施設」への計画見直しについて、郡市長は「今示している数字とは比較にならない高額なものになる」と、修正を否定した上で、「現計画は市民が主役になる施設として最良なもの」と理解を求めた、と報道もされております。

Q そこで伺います。郡市長は、市民が求める計画の見直しを「今示している数字とは比較にならない高額なものになる」と否定し「現計画が最良」と説明されました。であれば、発言の論拠となった「比較検討した計画内容」と「その具体的な数字」を、明確にお示しください。

② 音響に関する懸念

 第二の論点は、音響に関する懸念です。

 メインホールの規模について、仙台フィルの編成やアマチュア、演劇等の利用を想定した場合、「2000席はあまりにも大きすぎる」との指摘が相次ぎました。

 また、客席がステージを360度囲む「サラウンド型」の形状についても、従来のシューボックス型と比べ、トップクラスの音響品質の達成は困難であるとの指摘が、音響工学の専門家からありました。サラウンド型は構造上、低音の反射や演奏者同士のアンサンブルが難しいことから、「アマチュアにとって使いにくい」との指摘が、音響工学の専門家からも、当のアマチュア音楽家からもあがりました。

 そこで市民が、「どのような響きが実現できるのか、物理的な定量性をもって示すべき」と求めたのに対し、市や音響設計者は、自社開発のシミュレーション手法の正当性を語るにとどまっております。

Q そこで伺います。郡市長が「優れた最高の音響」と謳う以上、少なくとも何をもって「優れた最高の音響」と言っているのか。客観的なデータに基づき、市民に真っ先に説明するのが道義的責任ではないでしょうか。市のご認識を伺うとともに、本ホールの音質の定量的な評価指標について、具体的にお示しください。

③ 本当に「選ばれる施設」になるのか

 第三の論点は、本当に「選ばれる施設」になるのか、という根源的な懸念です。

 宮城県が同時期に同じ2000席規模の県立ホールを仙台市内に整備する中で、本市が同規模の施設を持つことへの疑問が再三指摘されました。加えて、2000人規模でありながら一般用駐車場がわずか90台という制約や、地下鉄の輸送力など、青葉山という都心部から離れた立地に関する現実的な懸念も示されました。専門的な知見から「1500席程度のシューボックス型を都心部に建設した方が、音響的にもコスト的にも優れている」という対案まで出されています。

 これに対する市側の説明は、まだ立地すら決まっていなかった令和2年度の「過去の需要想定調査」と、「震災メモリアル機能を含む複合施設である」という独自性を盾に現計画を正当化するものに終始し、具体的な需要の根拠や、県立ホールとの明確な棲み分けに関する定量的なデータは示されませんでした。会場からは「まさか、根拠がない計画だったとは…」と、ため息が聞こえました。

 このほかにも、箱物ありきでソフト面の議論が遅れている点など、市民からの疑問や懸念は多岐にわたり、「一度立ち止まって再検討すべきではないか」と計画な見直しを求める声が多数あがりました。

 総じて、参加した市民の皆様は、単なる感情的な反対ではなく、論理的かつ建設的な批判を行っており、私は仙台市民の市民力の高さ、シビック・インテリジェンスの高さを、強く実感しました。

 一方で市側は、長時間の質疑に応じたという「手続き上の誠実さ」は見せたものの、「なぜその規模・予算でなければならないのか」という根源的な市民の疑問に対しては、「これまで議論してきた」「今後検討する」という決定済み、あるいは先送りの回答スタンスに終始しました。市民側が求める、意思決定の根拠となったデータを市民の前に広げて再検証する姿勢は全く見られず、結果として、対話は全く噛み合っているように見えませんでした。

 本市は「市民理解を得るために、説明を尽くす」としていましたが、対話が噛み合っていなければ、説明を尽くしたことにはなりません。一方的に回答しただけであり、市民の理解は得られていないのが実態ではないでしょうか。

 市民からのクリティカルな質問に対して議論が深まらない状態で、そもそも本市が目指す「市民共創」、「市民が主役の文化創造の場」など、実現できるはずがありません。

Q そこで伺います。今回の市民説明会やシンポジウムを通じて、双方向の対話が全く噛み合わないまま終わった現状において、本市は本当に「市民の理解を得られた」とお考えなのでしょうか。郡市長の率直なご認識を伺います。

 現に6月17日には、「(仮称)仙台音楽ホール・メモリアル複合施設を考える市民の会」が設立され、仙台市が公表している数値の具体的根拠等、基本設計時に当然決定されるべき事項の開示と、市民が深く理解し納得できる双方向の対話が、市民から強く求められております。

機運醸成事業を委託している相手から、事業を推進する要望書を受領するのは問題

 最後に、もう1点、伺います。

 2000席の音楽ホールの早期整備を求める特定の市民団体からの要望書を、6月4日に市長が受け取ったとの報道を承知しております。郡市長は今回の議会答弁におきましても、この要望書の存在を「市民の理解が進んでいる根拠」として複数回引用されました。

 しかしながら、この団体は、仙台市が「音楽ホール建設機運醸成事業」として令和6年度からの3年間で3000万円余もの予算をかけて、業務を委託している団体です。

 本市が数千万円規模の税金を投じて音楽ホール建設の機運醸成事業を委託している相手から、その事業の推進を求める要望書を市長が受け取るという構図は、他の市民や市民団体の目に、様々な憶測を呼ぶ言動に映るのではないでしょうか。

Q 市民の間でも賛否が分かれている状況下であれば、なおさら、本市が音楽ホール建設の機運醸成事業を委託している団体から、その事業の推進を求める要望書を、少なくとも、市長は受け取るべきではなかったと考えるものですが、郡市長のご認識を伺います。

 以上で、私からの一般質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

答弁 Answer

市長

◆市民理解について
 複合施設へのお尋ねでございます。シンポジウムでは、慶應大学の片山教授また、藤本壮介さんもお話しがございました。片山教授からは、文化芸術には災害の脅威を追体験させる力があること、また、藤本氏からは、複合施設は多様な出会いで人や活動の繋がりが生まれるとの話もあって、この文化施設を核とした、まちの姿について、市民の皆様方のご理解が進んだものと受け止めております。また、音楽団体や商工会議所などからも、こどもたちが優れた音響空間を体験することは将来の大きな財産となる、都市の品格を高める新たな創造拠点となるとの声もいただいたところでございます。人や街を豊かにする本施設の意義というのを丁寧にお伝えしながら、未来を見据えたまちづくりの実現に向けて進んでまいりたいと存じます。

答弁 Answer

文化観光局長

◆現計画との比較について
 複合施設に係る比較検討についてです。平成29年に設置した音楽ホール検討懇話会における議論を経て、施設の機能と規模、整備場所について検討を行った上で、令和4年に両施設の複合整備を判断したものです。仮に仙台駅周辺に9千㎡の土地を取得する場合、この面積と公示価格に基づくと440億円程度であり、実際の土地の取引価格はその数倍になることも想定されますことから、取得までの期間もかかり、実現可能性は低いものと考えております。改めて検討すれば、相応の年月を要するため、物価上昇の状況を踏まえ、現在の計画が適切と考え、引き続き丁寧な情報発信に努めながら、事業を進めてまいります。

◆「優れた最高の音響」のホールについて
 大ホールの音響性能についてです。基本設計における音響計画に関しては、音響コンサルタントによって、3次元コンピューターシュミレーションを行い、座席配置や天井の角度、壁の凹凸等を最善の状態になるよう確認し、当該コンサルが関わっている国内外の評価が高いホールとそん色のない音響のホールとなるよう進めております。実施設計段階において、模型実験を行うなど、さらに検証精度を高めてまいります。

◆機運醸成事業委託団体からの要望書受領について
 機運醸成事業の実施団体からの要望書についてです。様々な施策の推進にあたりましては、多くの市民の皆様のご意見を伺いながら進めることが大切と認識しており、地域の団体をはじめ、各種団体からの要望につきましても、補助や委託関係の有無に関わらず、貴重なご意見として頂戴しております。そうした考えのもと、本施設の整備に関しましても、基本構想や基本計画の策定段階から、有識者や各種団体など、様々な方々のご意見を伺いながら進めているところでございます。