2026.02.17 議会質問報告

【令和8年第1回定例会】本会議(一般質問)「本市スタートアップ・エコシステムの現状と課題〜ゴール(KGI)未設定のまま中間指標(KPI)を運用する構造問題〜」

概要 Summary

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえは、今回の定例議会で計6回登壇し、質疑等を行いました。特に第1回定例会は今年度事業の総括を踏まえて次年度の予算案について審査を行う議会のため、令和7年施政方針で郡市長が掲げた「グローバル・スタートアップ都市・仙台」を中心に、地域からいただいた声をもとに、1年にわたって関係者へのヒアリングや視察を行った結果を踏まえ、質疑を行いました。まず一般質問では、スタートアップ・エコシステム拠点形成計画において、仙台市はエコシステムビルダーを自認しているにもかかわらず、コンソーシアムとして最終ゴール(KGI)の合意形成を諦めたが故の結果として、コンソーシアムが実質的には機能していない現状を指摘。本市はエコシステムビルダーを自認する以上、KGIの設定に向けた合意形成に責任を持つべきと訴えました。
 以下に、大草よしえの一般質問の録画中継(仙台市議会HPリンク)、質問内容及び市長等の答弁(全文)を掲載いたします。

録画中継はこちら

令和8年第1回定例会 2月17日 本会議(一般質問) 心豊かな社会をつくる会 大草よしえ 質疑

本市スタートアップ・エコシステムの現状と課題
〜ゴール(KGI)未設定のまま中間指標(KPI)を運用する構造問題〜

 心豊かな社会をつくる会の大草よしえです。議長のお許しをいただきましたので、私からは本市のスタートアップ・エコシステム施策について、一般質問をさせていただきます。

 はじめに、前回の定例会でも、本市のスタートアップ・エコシステム施策に関する質問を予定していましたが、ご当局から「もっと広く意見を聞いてほしい」とのお話を受け、確かに、一部の意見しかヒアリングできていない可能性もあり得ると考え、調査が十分でないと判断し、質問を取り下げました。議会運営にご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。

 その後、ご当局からご提示いただいた、産学官金・スタートアップの団体リストすべてにヒアリングを行いました。本日は、その結果を踏まえ、改めて質問いたします。

理想は「自律的で持続可能なエコシステム」

 まず、本市の2021年度から10カ年の総合計画では、「世界に発信できる東北発のイノベーション創出」が掲げられ、社会起業家やスタートアップ、地元中小企業など、あらゆる事業者が挑戦しやすい環境・風土づくりが明記されています。この方針を受け、本市の2024年度から3カ年の経済成長戦略では、「学都の『知の力』を活かしたイノベーションの創出」が掲げられ、「世界にインパクトを与えるスタートアップの育成」が位置づけられています。

 スタートアップを継続的に生み出し、成長を促す環境は、自然界の生態系になぞらえて、「スタートアップ・エコシステム」と呼ばれています。起業家が挑戦し、その成功や失敗の経験が共有され、次の世代の挑戦へとつながる。企業は市場競争の中で評価され、成長する企業は拡大し、そうでない企業は淘汰される。この新陳代謝が経済合理性に基づき繰り返されることで、資金や人材、経験が再び次の挑戦へと循環していく。この「挑戦の循環」が自律的に回っている状態こそが、エコシステムです。その代表例としてよく知られるのが、米国のシリコンバレーです。ベンチャーキャピタルや大企業、大学など、多様な主体が相互に補完し合いながら、「挑戦が連続する仕組み」を長年にわたって形成し、市場を牽引してきました。

 そこで、我が国でもエコシステムを政策的に強化しようと、日本政府は2019年に「第1期スタートアップ・エコシステム拠点都市戦略」を策定し、2020年に仙台市は「推進拠点都市」に選定されました。さらに2025年の「第2期戦略」において、仙台・東北コンソーシアムは「グローバル拠点都市」に認定されています。この戦略で内閣府は、「ヒト・モノ・カネが自律的に回る仕組み」の構築をエコシステムビルダーに求めています。

 これに対し、仙台市は、内閣府に提出したスタートアップ・エコシステム拠点形成の計画書において、現状と理想を次のように述べています。

 立ち上げ当初は「仙台市を中心とした行政発信でスタートアップ支援体制を立ち上げ」た経緯があるものの、「2019年の仙台スタートアップ・エコシステム推進協議会の発足を契機とし」、昨年2025年の採択段階では、「より産学官金が一体となった支援体制が確立」した「安定期」に入っていると計画書には書かれています。また、計画書には明記はされていないものの、ご当局も「最終的には仙台市の手厚い支援がなくても回る、自律的で持続可能なエコシステム形成が市として目指す姿だ」と常に仰っています。

 ご当局の仰るように、「自律的で持続可能なエコシステム」という最終像は、極めて重要な前提です。私もこの理想が仙台・東北の地で実現できれば、素晴らしいと考えています。しかしながら、その理想と現実に大きなずれが生じてしまっているのではないかとの疑念を抱いた次第です。

 というのも、コンソーシアムの現状をご当局に確認したところ、個々のステークホルダーと仙台市との関係性は、強弱はあれど形成されつつあるようですが、一方で、スタートアップ・エコシステムのコンソーシアム全体としては、年に数回程度の会議があるだけで、 コンソーシアムとしての一体感が強くあるわけではない、とのことでした。さらに、ステークホルダー間の横の議論も、特にあるわけではないとのことです。一般論で考えて、年に数回程度、形式張った会議を開催しただけで、計画書にあるような「産学官金が一体となった支援体制の確立」とは、言えないのではないでしょうか。

KGI未設定のままKPIを運用する構造問題

 そこでスタートアップ・エコシステムのステークホルダーに一年にわたってヒアリングを行ってきた結果、まず、仙台市が一生懸命、主導してスタートアップを応援する機運を地域につくろうとしていることと、本市職員の皆さんの熱心さについては、誰もが認めていたことでした。また、それぞれのステークホルダーは、各々のミッションをそれぞれ頑張ってやっていることは、よく、わかりました。しかしながら一方で、コンソーシアムとしての一体感については、言及した団体はありませんでした。

 その一番の原因は、「コンソーシアムとして目指しているゴールがふんわりしていて、よくわからない」というのが、共通の声でした。さらに残念なことに、発起人の一部からは強いネガティブな声も複数聞かれました。

 そのような声を受け、仙台市が2025年に内閣府に申請したコンソーシアムの計画書を改めてよく精査した結果、重大な問題点があることが明らかになりました。

 なんと、事業の中間指標であるKPI(Key Performance Indicator)が掲げられているにもかかわらず、最終的にどんな状態になっていれば成功と言えるかを一意的に定義するKGI(Key Goal Indicator)が掲げられていなかったのです。本来、KPIとは、最終ゴールのKGIに近づいているか、そのプロセスを定量的に評価するための中間指標です。つまり、中間指標のKPIだけが掲げられ、最終ゴールのKGIが未定義というのは、そもそもあり得ません。

 そこで、当局にKGIを確認したところ、「以前、コンソーシアムでKGIを設定すべきという声がメンバーからあったので、議論を試みたことがあったが、ステークホルダー間で利害が割れ、合意形成ができなかったので、KGIは掲げていない。そもそも行政施策でKGIを設定すること自体が難しい」との説明を受けました。確かに、民間企業と比べてゴールは多義的ですし、ステークホルダーも産学官金・スタートアップと多層ですし、さらには成果も長期的、間接的ですから、KGIの設定が容易ではないことは理解できます。

 しかしながら、とはいえ、内閣府に提出した公式文書で、現に中間指標のKPIを掲げている以上、最終ゴールであるKGIが未定義かつ未合意な状態のまま、中間指標のKPIを運用すること自体、 行政計画として、論理の一貫性に欠けるのではないでしょうか。ましてや、産学官金・スタートアップは、根本的にインセンティブが異なるからこそ、コンソーシアムとしてのKGIが合意形成されていなければ、コンソーシアムは形骸化していると言わざるを得ないのではないでしょうか。

 ここで、コンソーシアムの複数の発起人からいただいた、非常に厳しい声ですが、実際の声をここで一部取り上げさせていただきますと、「そもそもコンソーシアムとして何を目指しているのかが、全く見えない。仙台市はコンソーシアムのメンバーと議論して作り上げるより、東京の委託業者と議論して作っているように見える。仙台市の役割もよくわからないので、こちらの役割分担もよくわからない。せっかく地域の主要な産学官金のプレイヤーが幹事メンバーなのに、活かしきれていないのではないか」との声が聞かれました。

 また、「仙台市が打つ施策の方向性がバラバラではないか」とか、「その施策は本当に行政がやるべきことなのか」と、本市の役割や制度設計の妥当性を疑問視する声、さらには「似たようなイベントばかりが増えたので、現場の負担感は増している」との声も聞かれました。中には、「実質的にコンソーシアムは、内閣府への申請のために単に集められただけの組織だろう」という、極めて冷ややかな声まで聞かれました。

 すなわち、これらの意見は、仙台市がエコシステムビルダーを自認しているにもかかわらず、コンソーシアムとしてのKGIの合意形成を諦めたが故の結果として、コンソーシアムが実質的には機能していない現状を示していると、認識しております。

形だけのコンソーシアムではなく実効性のある一体的な運営を

 一般論として申し上げれば、そもそもなぜコンソーシアムをつくるかの理由は明確です。単独の主体では解けない課題に対して、権限も利害も異なる主体が、それぞれの強みを持ち寄り、協働して実装するためです。

 そのためには、何のために集まり、何をもって成功とし、どこまで行けば役割を果たしたと言えるのか、すなわちKGIを明確にすることが不可欠です。KGIが共有されてこそ、戦略的な連携が可能になります。形だけのコンソーシアムではなく、実効性のある一体的な運営を行うためには、この前提が欠かせません。

 仙台市は、エコシステムビルダーを自認するのであれば、少なくともコンソーシアムとしてのKGIを議論して取りまとめ、全体で共有するところまでは、仙台市が責任を持つのが、筋ではないでしょうか。さもなければ、計画の終了段階で、コンソーシアムが立ち消えになることは容易に想像できます。ましてや、自律的で持続可能な仕組みの構築など、このままでは不可能ではないでしょうか。

 そこで、コンソーシアムの共同代表である郡市長に伺います。

Q 仙台市がエコシステムビルダーを自認する以上、少なくとも、KGIの合意形成は、仙台市の責任の範疇と考えるものですが、仙台市としてコンソーシアムのKGIを議論し、取りまとめるつもりはあるのでしょうか。コンソーシアムの共同代表である、郡市長のご見解をお聞かせください。

なお、仙台市の具体的な施策については、この後の予算等審査特別委員会で詳しく質問させていただきます。私からの第一問は以上です。ご清聴ありがとうございました。

答弁 Answer

市長

 只今の大草よしえ議員のご質問にお答えを申し上げます。スタートアップは、地域経済の成長に向けたエンジンであり、産学官金が方向性を一つにして、エコシステムの形成を目指して支援をしていくことが重要と認識しております。仙台・東北スタートアップ・エコシステム・コンソーシアムでは、東北各県や大学を含む多くの関係者の参画のもと、5年後の目指す姿とそのKPIを定めて、取組みを進めているところでございます。今後、会員の皆様が持つ知見や取組み状況などを踏まえ、また、幅広く関係する方々のご意見なども伺いながら、コンソーシアムとしてのKGIを含め、最終的に目指す姿、それぞれが果たしうる役割などについて、さらに議論を深めて参ります。引き続き、仙台・東北の産学官金の連携をより一層強めて、一体となって、自律的かつ持続可能なエコシステムが構築できるように努めて参りたいと存じます。以上でございます。

Q ご答弁ありがとうございました。「コンソーシアムとしてのKGIを含め、最終的に目指す姿、それぞれが果たしうる役割などについて、さらに議論を深めていく」というご答弁をいただきましたが、確認のために再質問させていただきます。本来であれば、KGIの合意形成は、コンソーシアムの結成時にやるべきことです。もう既にこの事業は、昨年度からスタートして1年が経とうとしているので、早急なKGIの合意形成が必要であると考えます。もし、それができないというのであれば、それは仙台市がエコシステムビルダーとしての責任を果たしていないことを意味するので、少なくともエコシステムビルダーの役割は、その責任をきちんと負える方に任せるのが筋ではないか、という趣旨で質問をさせていただきました。改めてお伺いします。仙台市はエコシステムビルダーとして、早急にKGIの合意形成を行う意思はあるのでしょうか。伺います。

答弁 Answer

総務局

 只今のご質問でございますけれども、仙台市がスタートアップの拠点形成の都市に申請をするにあたって、ということですけれども、国の方針に基づきまして、この第二期に応募をしておりますが、その中で、国としても、ある一都市だけではなく、面的な広がりをもって、スタートアップ体制に取り組んでもらいたいというお話がございました。そうしたことも含めて、東北地域というものを入れております。
 その中で、先ほど、ご質問の中でもございましたけれども、KGIとして数値的な目標値を定めようとすると、それぞれのステークホルダーによって認識が違うところがあり、なかなか合意形成、一つのものにまとめていくのが難しいという過去の経験があり、そうしている中で、であれば、今回応募しないとなると、他の日本国内の地域との競争に対して負ける、ということもありますので、私どもとしては、先ほどご指摘ありましたが、応募して拠点都市に認定されるということが、海外に向けて、いろいろとスタートアップ支援をしていく中でもステータスとなる、という部分もありますので、そういった意味で今回まずは、それで資料をつくった、と。
 ただ、最終的に目指すところが明確でないままに進んでいくというのはやはり、組織として問題だというのはありますので、早急にという話ではありましたが、そういった利害関係の調整もございますが、年に1回とか2回とかの会議ではなくて複数回やって、色々な議論をやって、そういったものでまとめて、最終的には同じところを目指して一緒に頑張っていこうという形でつくりあげていきたい、と考えているところであります。